2011年5月18日水曜日

美しい心中描写 - グラーグ57

グラーグ57 (新潮文庫)を読み終えた。


作品全編において、とりたてて気にするような場面でもなかったが、以下の一文がとても美しく思えた。
原文はもちろん翻訳が良かったのだろうか。

なぜなら、レオはかつて共産主義に抱いていた盲目的な信仰を今は自分の家族に向けているからだ。レオの考えるユートピアは以前より小さくなり、より具体的なものになった。全世界ではなく、たった四人に囲まれるだけの世界になった。ただ、簡単に手にはいらないことはどちらも変わらなかった。

思えば前作チャイルド44 (新潮文庫)でもそうだが、心中の描写が緻密というよりは美しいと思える作品だ。


少し前までトム・クランシーの作品を読んでいたが、そちらと比べると描写がわかりやすくも美しい。トム・クランシーの作品はどれもテンポ良くおもしろいのだが時に読み返さないと情景がつかみにくいところがある。トム・クランシーの作品は純粋に娯楽小説だが、トム・ロブ・スミスの作品は純文学的な良さもあるような気がする。鼠たちの戦争 (新潮文庫)でも同じようなことを感じた記憶がある。昔のロシアが舞台だとそのように感じるよう刷り込まれているのかもしれないが。


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